不妊治療 Fertility treatment

高度不妊治療について For advanced infertility treatment

1.高度不妊治療とは

女性の体から卵子を、男性の体から精子を取り出し、女性の体外で精子と卵子を受精させ受精卵を培養し、細胞分裂(分割)を確認してから、女性の体内に戻す方法。

高度不妊治療の対象

体外受精(IVF) 卵管性不妊・AIHでは難しいレベルの男性不妊、女性に抗精子抗体がある、女性が30代後半以降の方、それまでの治療方法では妊娠しなかった場合等が対象になります。
顕微授精(ICSI) より深刻な男性不妊の場合や体外受精で授精障害を認める場合等が対象となります。
凍結融解胚移植

体外受精・顕微授精での採卵周期で移植せず、良好胚を選別し凍結保存を行っています。
凍結した場合、凍結融解胚移植を行う事ができます。

  • 新鮮胚移植より、移植当たりの妊娠率を上げるため
  • OHSS(卵巣過剰刺激症候群)を発症した方、OHSSになる可能性のある方
  • 一人目のお子様を授かった後で、凍結胚でお二人目の妊娠を望まれる方

治療の流れ

体外受精・顕微授精の基本的な治療の流れを説明します。

採卵から妊娠までの流れ 採卵/体外受精/顕微授精/培養/新鮮胚移植

2.卵巣刺激法

自然の状態では、卵巣から1個の卵子しか排卵されません。
体外受精・顕微授精では複数の卵子を採卵でき、受精卵を多く得られた方が妊娠する可能性が高くなる事が明らかになっています。
そこでたくさんの状態の良い卵を採取できるように排卵誘発剤を使用します。

刺激周期(GnRHアナログ+HMG)

月経開始3日目よりHMG製剤の注射を毎日行い、卵胞が成熟したら排卵を起こすHCGを注射し、HCGの投与後35~36時間後に排卵直前の成熟した卵子を採取します。
HMGで卵胞を発育させる刺激周期では、育てた卵が採卵前に排卵してしまわないように

  • GnRHアナログと呼ばれる薬を使って排卵をコントロールします。
  • GnRHアナログの種類・使用方法で様々なバリエーションがあります。
GnRHアゴニスト ロングプロトコール
  • GnRHアゴニスト製剤(点鼻薬:商品名ブセレキュア)を高温期中期から1日に指定回数を鼻の穴に噴霧し、HCGを投与する日まで続けます。
  • GnRHアゴニスト ロングプロトコールを使用した卵巣刺激法の流れ
GnRHアゴニスト ショートプロトコール
  • GnRHアゴニスト製剤(点鼻薬:商品名ブセレキュア)を月経開始1日目から開始し、HCGを投与する日まで続けます。
    ロング法では採卵数が少ない方に採用します。
  • GnRHアゴニスト ショートプロトコール
GnRHアンタゴニスト(セトロタイド)
  • 卵胞が十分に発育してからGnRHアンタゴニスト製剤(商品名:セトロタイド)を開始し、毎日1回採卵直前まで数回注射します。
  • GnRHアンタゴニスト(セトロタイド)を使用した卵巣刺激法の流れ

低刺激周期(クロミフェン周期)

クロミフェン周期(自然周期)
  • 月経3日目からクロミフェンの内服を開始し、卵胞を発育させます。採卵数は刺激周期に比べると少なくなりますが、体への負担は少なく、毎周期繰り返すことができます。
  • クロミフェン周期(自然周期)による卵巣刺激法の流れ

3.採卵と採精

採卵

排卵直前の卵子を採卵する

経膣超音波で観察しながら、膣の方から細い針で卵胞を穿刺、吸引し卵子を取り出します。
多少の痛みを伴うため、静脈麻酔という軽い全身麻酔をして行います。
採卵数が少ない時は局所麻酔で行う時もあります。

1.採卵直前の成熟した卵子を穿刺吸引 2.超音波で卵子を確認しながら採卵

採精

採卵と同時に精子を採取します

ご自宅で採精して頂いて、採卵当日ご来院の際に持参して頂きます。
ご持参が難しい場合は、当院の採精室にて採精して頂く場合もあります。

4.受精卵を得る

体外受精

卵巣から排卵直前まで成熟した卵子を採卵し、洗浄した精子を含む培養液の中に入れて受精させ、受精・分割が進んでしている受精 卵を女性の子宮内に戻す方法です。体外受精、IVFと称されます。 自然では女性の体内で行われる精子と卵子の出会いを、女性の体の外で行いますが、受精するかどうかは自然の力にまかせます。

採精した精子を調整し、卵子と同じ容器に入れます。(媒精)その後、自然の力で受精が行われます。

顕微授精

卵子と精子を体外に取り出して、倒立顕微鏡操作下で受精をうながす方法を顕微授精と呼びます。
顕微授精には通常、卵細胞の中へごく微細な針を刺し、直接精子を注入する卵細胞質内精子注入法(ICSI)が用いられます。
ICSIを行うことにより、通常の体外受精では受精が極めて難しい男性不妊症例や、 原因不明不妊症例においても約80%の受精率が期待でき、そのうち70~80%が移植可能な胚になります。

顕微鏡で卵子に精子を直接注入します。

5.移植方法

新鮮胚移植

  • 成長した胚を子宮に戻す

    胚移植は模擬胚移植で使用した同じ種類のチューブ内に受精卵を入れ、子宮口から子宮内に戻します。胚移植時には移植する胚の顕微鏡像と、子宮内に胚移植しているエコー画像を採卵室のモニターに映しますので、ご自身で移植の様子を確認いたたけます。

  • 移植胚を着床しやすくします

    移植胚を子宮に着床しやすくする為に、薬の力をかります。薬や注射の種類や使用方法は、患者様の状態に合わせて処方します。いずれも、子宮内膜を厚くして着床しやすい環境に整えたり、子宮の血流を良くする作用があるもので、着床を手助けします。

凍結融解胚移植

採卵した周期に凍結保存した胚を、その後の周期に融解し移植する方法です。
採卵周期で胚移植を行う新鮮胚移植の場合、ホルモンバランス・子宮内膜の状態が崩れており、胚移植を行っても着床しにくい状態にあります。
胚を一旦凍結し、子宮内膜をより着床しやすい状態に整えてから凍結融解胚を移植することで、新鮮胚移植よりも高い妊娠率が得られます。当院でもほとんどの場合、凍結融解胚移植を行っています。
最近では、1人目のお子さんを体外受精で授かった方が、そのときの余剰胚を凍結保存しておき、数年後に移植して2人目を授かるというケースも珍しくなくなってきました。当院でも最初のお子様の妊娠時に凍結した胚を利用し、10年後40歳を超えてから凍結融解胚移植を行い妊娠・出産された方もいらっしゃいます。
加齢とともに急速に卵子の老化が進み、妊娠率は下がっていきます。比較的高齢だけれども凍結胚があるというようなケースでは、新たに採卵するよりも、少しでも若い頃の凍結胚の方が良質な可能性も高く、妊娠しやすくなると考えられます。

胚盤胞移植

採卵後5~6日間胚の培養を行い、胚盤胞になった胚を移植する方法です。
自然妊娠では胚が子宮内膜に着床するのは胚盤胞と呼ばれる時期になってからであり、胚盤胞を子宮腔内に移植することで、より生理的に近い状態で胚を戻すことができます。

  • 自然妊娠

    卵管内で受精・分割、
    5~6日後胚盤胞の状態で子宮に到着

  • 胚盤胞移植

    採卵後5~7日、
    体外で胚盤胞まで培養し子宮内に戻す

  • 分割胚移植

    採卵後培養2~3日、2~8分割卵を子宮内に戻す
    子宮内で胚は胚盤胞まで発育

二段階胚移植

二段階胚移植とは、分割胚移植と胚盤胞移植を組み合わせた方法です。
採卵の2~3日後に4~8細胞期の受精卵を1~2個移植し、その他の胚はさらに培養を続けて胚盤胞まで発育させてから、採卵の5~6日後に子宮内に胚盤胞を移植する方法です。
このように二段階に胚移植することにより、従来の体外受精より高い妊娠率が報告されています。
二段階胚移植する利点は、2日目に入れた最初の胚が子宮内膜になんらかの刺激を与えることにより子宮内膜の胚受容能が高まったところへ、着床率の良い胚盤胞を移植するために、妊娠率が上がると考えられています。
しかし、二段階胚移植を行うためにはある程度の受精卵数が必要となるため、キャンセル率は高くなります。
また、多胎妊娠の確率も高くなります。

孵化補助療法

受精卵は透明帯という膜に覆われおり、子宮に着床する前には透明帯を破って外に出なければならず、これを孵化(ハッチング)と呼びます。
ところが透明帯が厚かったりすると、孵化しにくくなり着床率が低下することがあります。そこで胚移植する前に透明帯に小さな穴をあけたり、透明帯を薄くすることで、受精卵が孵化しやすくなる方法(孵化補助療法)が考えられ、妊娠する可能性を高めることができます。
透明帯が厚い時または40歳以上の方や体外受精を数回行っても妊娠しない方などに有効な方法です。

胚盤胞透明帯完全除去法 受精卵(胚)に酸性の液をかけ、周りを囲む透明帯全体を薄くする方法

6.受精卵凍結

順調に成長した受精卵が複数あっても、原則1個の胚を移植します。
残りの胚(余剰胚)は、凍結保存して次回の移植に使う事ができます。

凍結保存のメリット

  • 採卵した周期には胚移植をキャンセルして、別の周期に移植する事で、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)の予防になります。
  • 凍結融解胚移植では子宮内膜の環境がよい時に移植する事ができます。
  • 凍結胚を移植する時には採卵をしないので、採卵のための投薬・注射を行いません。
    その結果、体にも経済的にも負担が少なくなります。
移植に使用しなかった受精卵は凍結